Wild Flower【ガチアクタ/ザンカ/現パロ】
第5章 やわらくてにがい溜息
「どーぞ」
「あぁ、ありがとう。さ、花衣さんも熱いうちに頂きましょう」
「ありがとうございます」
「いやぁ、それにしてもアプリでこんな綺麗な人と知り合えるとは思わなかったなぁ」
「はは、お世辞は大丈夫です」
「僕お世辞は言いませんよ、ほんとタイプです」
「ありがとうございます」
「ただね?」
前日の夜、明日は空いているかと連絡が来て、2人で行くね、なんて言うからてっきり友人でも連れてくるもんだと思ってた。
だったらカウンターよりテーブルがいいかとか、女同士なら彼女の好きなチョコレート買っとくかとか。
それがどうだ。
蓋を開けたら、どこぞの馬の骨やねん。
溜まったままのカップを洗い、シンクに並べながらも、耳だけは2人の会話を拾おうと必死な自分がいて、笑いそうになる。
別に気になるとかそう言うことじゃない。これは知り合いが変な奴に捕まらないかと言うただの余計なノイズだ。それ以上でもそれ以下でもない。
「いい歳してその髪はどうかと思う、……あ、僕じゃなくてね、僕は個性を大事にするタイプだから」
「そう、なんですね」
「でも普通はまぁ、ねぇ。わかるでしょ?花衣さんも」
は?
こいつはさっきから何を言うとんじゃ?
自分は如何に偉大かを散々語り散らかしただけならまだしも、彼女を下げて視野の狭い自分の正義をまるで世界の答えだとでも言うように。
こいつほんま、何様や。
洗いかけのカップを持つ手が止まって、無意識に奥歯を噛み締めてる自分に気づいて、視線は彼女へ。悲しそうに少しだけ俯いた横顔に、不謹慎ながらどきりとした。それでも次の瞬間には目の前の男を視界に写して笑う。
その表情に目が離せなかった。