Wild Flower【ガチアクタ/ザンカ/現パロ】
第5章 やわらくてにがい溜息
「普通はまぁ、ねぇ?わかるでしょ?花衣さんも」
は?
こいつはさっきから何を言うとんじゃ?
ヘラヘラしながら相手の心を無遠慮に抉ってくる。そう言う奴が一番厄介だ。
悦に浸ってさも自分が世界を回しているような気になって。
浴びせ続けられる側の、どんな風に感じて、どうして歪な表情を貼り付けたのか、何にも見えていなかった。
「こんなおしゃれなカフェだと緊張しちゃいますよ」
「いいですよね、ここ。わたしもお気に入りなんです」
「郊外なのに意外でした」
「……です、ね」
窓の外の派手髪と、その隣でひたすら口だけ動いてる男を見た時は既視感しかなかった。
雨の日の彼女よりまだ表情は柔らかいが、それでも時折り見せる"間"は、そう言うことなんだろう。
まさかとは思って視線を外せずにいれば、そのまさか。知らない男と仲良くご来店下さった彼女は、最初の定位置だった扉から1番近いテーブル席に男と座る。
俺のほうに一瞬だけ目線を送ったそれは、申し訳なくもどこか開き直りに近いような目つきだった。
つーかうちは喫茶店じゃ。そんな小洒落た言い方せんとってくれ、けったくそ悪い。
彼女と同じもので。そうメニューを閉じた男は店に入ってきた瞬間から、それはもう機関銃のように言葉を発していた。
昔の武勇伝から始まって、いかに自分は社会に貢献しているかを見せびらかし、出会った頃よりよく話すようになった彼女さえをも圧巻するような猛威。
息つぎどこでしとるんかある意味心配なるわ。
色んな客を見てきたから分かる。スピード感のある口調でも、どこか物腰の柔らかい言葉選び。だが、時折見せる棘は隠せていない雑さ。コイツ絶対女より上に立ってコントロールしたいタイプやろ。
サイフォンに溜まった液体を注ぎながらそう思った。あの人なんでこんなヤツと会おうと思たんじゃ、とも。