第12章 再会(続)/シリアス
「…………アイツにか」
「うん」
聞こえているはずの言葉をわざわざ聞き返すなんてこと、繭の知る所の凛ならばまずしない。
それだけのパワーワードを投下した自覚はあるが、不審な反応を見せているのはむしろそちらも同じ、そう思えば繭の中に平常心が戻ってくる感覚はある。
軽微な緊張感の間を過ぎるのは、ただの風の音だ。
繭は風に舞う髪を片手で押さえながら、視線を下にそらした。
不必要に毛先をすくい指先で撫で続けるのは、きっと意識が半分過去に引っ張られているからだ。
「その時に急に鼻血出て困って。で、助けてもらった」
「…………変な理由それか」
「……そこまでじゃない」
「変だろ」
「……」
変という指摘を完全否定しないのは、繭自身も多少なり影響を受けている自覚があるからだ。
他意はないが様々な感情や出来事が混ざっていたあの状況では、むしろそれが普通でもある。
ただ少しだけ、表情がどこか緩んでいるのが自分でもわかるから、繭はその場から足を速める。
空気が重いというよりも、どこか狭い感じがするからその場を急ぐ。
凛の先を歩きながら言った。
「……なんか」
「…………」
「……ちょっと嬉しかったんだ」
「…………」
「……なんだろう、色々、少し」
繭が足を速める分、後ろから聞こえる声がやや遠ざかる。
「………………単純だな」
「……いいよ、単純で」
「……よくねえ」
「……私がいいんだから、いいでしょ。ほっといて」
自分の言葉にわずかに棘が乗るのがわかった。
その勢いに任せて更に足を急がせた。
単純、その指摘は図星であるしその通りでもある。
先日のほんの数分のやりとりに対し、多少の過剰解釈はあるのかもしれないが、そこまでの誇大妄想を抱くほどの重みは乗せていないつもりだ。
それをどう消化するかは繭の自由でしかない。