第12章 再会(続)/シリアス
「……なんか、洗っても落ちなくてシミになって。でも、ホラ、捨てるのも勿体ないし……」
「誰もそこ聞いてねえよ」
「……えと、そう。あの日ちょうど体育があって、体育の授業で顔にボールぶつかって……」
「何説明してんだ」
「……だから、帰りに急に鼻血が出て。その時に、その時の。で、シミになっちゃって……」
「それ何回言う」
言い方が何やら説明じみているのは繭自身にもわかった。
その割に、繭の中にはやたら溶けた感じがあるのは、あの日あの場に冴がいたせいな気はする。
「話聞いてねえだろ」
「聞いてるよ」
「何の話してた」
「……血の話」
「違う」
「何が違うの」
頭の中を横から邪魔されるような小さな不快はあったが、そこまでこだわる所でもない。
繭は一度息をついてから、少しだけ話題を切り替えた。
声をやや明るくしてみる。
「鼻血ってさー」
「……」
「ティッシュ詰めない方がいいらしいよ」
「急に具体的だな」
「……」
繭の歩調が微かに緩くなる。
無意識に、自分の目元に力が乗るのが繭自身にもわかった。
「……なんでそんな詰める感じなの」
「詰めてねぇ」
「……そっか」
「……」
凛は思うことを言っているだけなのだとしたら、確かにこれは繭の主観の問題だ。
会話をしていて妙に息苦しい感じがあるのは、繭自身にあえて言っていないことがあるからだろう。
先日のことはわざわざ隠すことでもないし、やましいことでもない。
そして人間ならば、揺らいだように感じる自分の優位性を確保したくなるのも普通だ。
繭は視線を凛に固定したまま、まだ出していない内容をはっきりと投下した。
「この前、冴に会った」
繭から見ても明らかに、一瞬だけ凛が止まるのがわかった。
まばたきもなく、繭の凝視が重くなってゆく。