第12章 再会(続)/シリアス
バグ検知の話
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そもそもなぜ、自販機で見たこともないメーカーのジュースを買い、美味しいとも思えないまま豪快に飲む羽目になったのか繭にはまだわからなかった。
今はただ、何かバグが発生したような感覚が妙に生々しいだけだ。
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数十分前までは、普通の帰り道だった。
夕方の帰宅路に凛の姿を見つけて、繭の方から声をかけるのは珍しいことではない。
元々帰宅路が同じ方向なのだから自然とそうなるタイミングはある。
そこそこに風が強く、街路樹がざわざわ音を立てている。
繭はそれを見ながら言った。
「今日風強いね」
「…………」
「今日風強いね!」
「……うるせぇ」
「聞こえてるじゃん」
繭は風に引かれる髪を左手で耳にかけた。
そこにふと、横から凛の視線が落ちてくる。
「……」
たったのしぐさ一つに、明らかに目先を固定してくる凛の動きはどこか不自然だった。
繭は静かに左手を下ろし、目を丸くして凛を見上げた。
「なに?」
「……」
目が合わなかったのは、凛の目線の先はしぐさそのものではなく、繭の手元の方に下っているからだ。
「……袖」
「………」
「……血か」
「…………あー」
繭は左手を自身の視界に入る程度にまで持ち上げた。
そして、指摘の矛先に目を向けてみる。
茶色のシミを残す袖口は、先日、冴と再会した時に鼻血が出た影響によるものだ。
あの時、やたら左手で押さえようとしたせいで、左側の袖が汚れてしまっていた。
繭は視線を少しだけ横に投げ、ゆっくりと口にした。
「……よくわかったね。血だって」
「色」
もしかしたら、凛は繭よりも血を見慣れているからわかるだけかもしれないとは思う。
別に理由を求められている訳ではないが、何となくその場をつなぐ言葉が繭の口から出た。