第10章 モズモズ/ほのぼの微ギャグ
「あとでリンク送るから観なよ。胸クソ悪くなれる」
「いらねぇ」
「なんで?モズモズしなよ」
「それ聞いて見るヤツいねぇだろ」
繭は一度大きく息を吐く。
ついでに、両腕を上に大きく伸ばしてみる。
「……あ~あ。学校の授業でそういう人の裏側とかを教えてくれるなら面白いのに」
「それで何が得られんだよ」
「感情とか、人の内面への理解?」
「ただの自己満足だろ」
「……ああ~!私、英語苦手だから英語の授業全部そうなれ~~~」
「現実見ろ」
「見てるからこそ言ってる。嫌いを好きに置き換える方がいい」
「逃げてるだけだろ」
ふと繭が思い出すのは昨日の映画のワンシーンだ。
心の揺れに任せ繭はふいに顔を伏せ、声のトーンを落とした。
「あとね……」
「まだあんのか」
「清純派のイメージだった女優さんの幸薄い人妻感が絶妙で、めっちゃドキドキした……」
「…………で?」
「だから、ドキドキした」
「…………は?」
「ドキドキしたって話」
「……それだけか」
「そうだよ」
「…………」
意味不明、理解不可、にじみ出る微かな苛立ち、そんな空気をありありと出す凛に対して、繭の声にも雑さが混ざった。
「なんか呑まなきゃやってられないから、今日は帰りにサイダー買う」
「ただの炭酸じゃねぇか」
「気分の問題だよ、サイダーもお酒になる」
「ならねぇよ」
まだ高校生の身で、不倫がどうのこうのを考える段階ではないのだが。
もう高校生だから、世の中は綺麗ごとだけで出来ていないことも見えている。
だからこそ、繭としては自分の中の答えの線引きが曖昧になる感じだ。
繭は思い切りの真顔を作り、横から凛を見上げた。