第10章 モズモズ/ほのぼの微ギャグ
感情論ベースの会話の話
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朝っぱらから繭の雰囲気は重い。
加えて言うなら顔つきも暗いし、足取りも遅かった。
「…………」
繭の様子がいつもと違うことは隣にいる凛にはすぐにバレている、それは空気感から繭にも理解は出来た。
その上で、無音が続くのは無関与に留まり続けているということだ。
状況が伝わっているなら、こちらから話に引き込むことも一つだと思う。
繭はよどんだ目元を微かにだけ横に動かした。
「……ねえ」
「……なんだ」
「……ちょっと聞いて」
「…………」
ここでの無言は肯定だ。
繭は思いつくがまま、ぼそぼそと話し出した。
「……昨日の夜ね」
「……」
「胸クソ悪すぎる不倫映画見ちゃって」
「何を見てんだ」
「で、今も気分がモズモズしている」
馴染みのない擬音のせいか、一瞬だけ会話が止まった。
「……モズモズって何だ」
「今の気持ちを必死に言葉にするとソレ」
「……何が言いたい」
「そういう気分てコト」
「曖昧過ぎるだろ」
「だから、モヤモヤじゃなくてモズモズなんだよ。モヤモヤより棘がある感じ」
「得意の例えで具体的にしろ」
「今はモズモズ勝ってるから無理。ニュアンスでしか言えない時もある」
「伝わらないなら意味ねぇだろ」
繭は溜息をつく。
内側にある感覚を正確に拾うことは難しくても、理屈で説明出来ることはある。
「主演女優さんが可愛くて少しだけと思って観たんだけど、どろどろ展開の怖いもの見たさっていうか、どう決着するのか気になって最後まで観ちゃった……」
「自業自得じゃねぇか」
「ああいうのって原因は何?当事者の心理状況?依存とか執着?不倫という関係性?男女間のもつれの最大値の結果?それとも運命論とかのそっち?」
「……多すぎるだろ。絞れ」
「いや、わざわざはいい。更に病みそうだし少し気になるだけでそこまでの興味はない」
「じゃあ考えんのやめろ」
相変わらず、凛との会話の中には共感という視点が欠如している。
繭は少しだけ皮肉めいた顔をして言った。