第4章 雨宿り/ほのぼの
頭を雑に掻けば、半端にしか止まっていない髪がこめかみあたりからさらさら流れてくる。
繭はそれを耳にかけ、思考を泳がせるようにペンを回し続ける。
同じ空間にいてもそれぞれが自分のことをしているだけであるから、部屋には繭がシャープペンシルを走らせる音だけがある。
アイデアらしいアイデアは正直浮かばない。
ただ、決めなければならない要点、そこに必要な役割、人数、準備物 等の構造面は理解出来るので 時折落書きも含めながらノートを大きく使いざっくりとだけ全体像を描いてみる時間が過ぎるだけだ。
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しばし集中してノートの半分くらいを埋めた後、繭はふと思い立つ。通学バッグを引き寄せ中から飲みかけのペットボトルの水を取り出そうとする。
そんな折り、目に入る凛の姿につい行動が止まった。
「…………」
器用にも壁を背にした格好のまま、静かに意識が落ちている。
眠っているというよりは、一時的休息、意識が切れただけの瞬間、そんな表現の方が正しい気もした。
深いまばたきの途中だと言われた方が違和感がないかもしれない、これを「眠っている」と表現するには警戒心を残し過ぎている。寝顔においても無防備と言うには力みを含むあたりは、性格がよく出ているとも言える。
にわかに頭が下がっているせいで長い前髪がますます長く見え、長身の凛の頭の天辺が見えようなのは少し新鮮だった。
ただ、いつもは人を寄せ付けない目つきをしているけれど 今は微かにだけ力が抜けている。
「…………」
こうして見ると、よぎるものはある。
言ってもお互いにメリットがないので口にはしないが 凛は兄によく似ていると思う。造形は近くても、日頃あまりそう感じないのは凛の目つきのせいなのだろう。
落ちそうでなんとか留まっているスマホが気にはなったが。
繭が関与することではないのでそのままペットボトルの水を大きく3口飲み、自身のノートに視線を戻した。
手を止めてしまうと部屋がますます音を無くすので、再び手を動かし始めた。