第4章 雨宿り/ほのぼの
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凛はふと目を開けた。
狭い視界に入るスマホで時間を見れば30分ほど過ぎていた。途中までは記憶があるのだから落ちた時間は15分くらいだろうか。
部屋は静かだ。一度、左右に軽く頭を振ってから視界を広げてみる。
部屋に音がない理由がはっきりした。
丸テーブルに突っ伏し、腕に肩頬を埋めた状態のまま繭はとっぷり眠りに落ちている。
周りには飲みかけのペットボトルの水と繭が食べ終えたアイスの外装とゴミ。猫のマスコットが一つだけついたスマホと中身が半分出ているペンケース、髪も留めているとは言いがたいほどに半端にほどけているし散らかっている印象は受けた。
ただ、それはどうでもいいことだ。時間もいい頃合いであるし、凛はスマホとイヤホンを片付けはじめる。
小さな物音で繭は静かに目を覚ました。
飽きと静寂に耐えかねて閉じた意識を、テーブルの上に置きっぱなしにしたアイスのゴミが少しだけ戻してくれる気はした。
そのまま視線を微かに回せば次に映り込んでくるのは凛だ。
あっという間にいつもの通り、時間が動いている。こちらは音も立てていないのに繭の溶けた視界に気づき、凛は一瞬で目を向けてくる。
「何見てんだ」
「……さっき寝てたよ」
「お前だろ」
多分雨もやんだ。荷物をまとめ終えると凛は素早く立ちあがる。その様子をぼんやり見てから、テーブルの隅で落ちそうになっているアイスのゴミを繭は無意味に手元に引き寄せた。
そして再び目を閉じて、微かに口だけを動かしてみる。
「……じゃあね」
ふやける声への返答はない。
五感も情緒も共有の対象ではないし、唯一共通項をあげるなら ただのこの部屋という空間くらいだ。そこに残るのは気にとめる必要もないくらいの小さなノイズだけだった。
それは、ドアの側にあるゴミ箱にアイスのゴミが捨てられた音だったと意識が戻った後で気づいた。
Fin