第4章 雨宿り/ほのぼの
帰宅途中に降っていた雨はもう少しでやみそうだ。
繭は自身の部屋を開け、通学バッグを放った。
そのまますぐに1階への階段を降りてゆく。
一直線に向かうのはキッチンだ、素早く冷凍庫をあけた。冷気を浴びながら視線を動かし3種類ほどあるアイスの中から分けられるタイプのものを選んだ。これは客人への一応の配慮だ。
部屋に戻りまずはアイスの封を切る。
凛は既に部屋の壁を背に腰を下ろしスマホを取り出していた。繭はチューブタイプのそれを二つに割り、一つを開けて口にくわえた。
視線の先では先ほど放った自身の通学バッグをきょろきょろ探しながら、真っ直ぐ腕だけを伸ばし もう片方を凛に差し出した。
「んう?」
いるか聞いたつもりの発音はブレていても意図は通じたようで、凛は一度アイスに視線を向けてから 軽く身を伸ばしてくる。
黙ってそれを繭の手元から上に抜き取った。
繭は制服の上着の前ボタンを全て外し、一度大きく伸びをする。通学バッグからノートとペン入れを出し部屋の丸テーブルに置いた。そしてシャープペンシルを素早く3回押す。
棚の上にあるヘアクリップをとり適当に髪をまとめ、ペンを器用に回しながら独り言のように言った。
「なんかさーウチのクラスに転校生が来るらしくて」
「…………」
「催しみたいのやる事になったんだけどいい案ないー?」
「…………知らねぇ」
返事があっただけ今日はマシな方だ。
ちらりと凛を見てみれば口元にはアイス、片膝を立て手元にはスマホがある。イヤホンを耳に突っ込んでからスマホを横に構えその先は微動だにしないので、これはおそらくサッカー動画でも見ているサインだ。
凛は基本必要のないことは喋らないし繭も本気で回答を求めいるつもりはない。
この場においてはコミュニケーションも情報交換も無意味であるとわかる。これは会話というよりも自分の脳内にあるタスク整理のための言語化に過ぎないのだ。