第4章 【直哉×無関心女中】
「でもな、ほんまは……ずっと前から気づいとったんやと思う。
お前が、誰よりも美しくて、誰よりも俺の目を奪っとるってことに」
告白。それは彼にとって、己を殺すのと同義だった。
「気づかんようにお前を見下して、惨めになるように罵っとった。
お前を認めるんが、怖かったんや。
……掃除しか能のない女中一人に、僕の世界を壊されるんが、耐えられんかった」
彼は一歩、たたらを踏むようにして彼女に詰め寄る。
「わざわざ女を連れてきて、お前を馬鹿にさせたんも…そうや。
お前を『手に入れるまでもない、つまらん存在』やと思い込ませたかっただけや。俺自身にも、お前にもな」
直哉の瞳が、熱い涙を堪えるようにギラつく。
「……お前のために、女を用意してたようなもんやな。
あんな派手な色乗せた女の隣に置いて、お前の地味さを確認して安心したかったのに……。
……逆やった。
誰を連れてきても、お前のくすみのない白さが際立つだけやったな」
直哉は、彼女の着物の襟元を、壊れ物を扱うようにそっと掴んだ。
「……俺がかけた呪いや。俺にしか解けん」
静かな部屋で、直哉は絞り出すようにそう呟いた。
彼の指先は、彼女の頬に触れたまま、熱を帯びて震えている。
は、その言葉の意味を正しく理解することはできなかったが、直哉の瞳に宿る、痛々しいほどの後悔だけは、彼女の胸の奥を微かに波立たせた。