第4章 【直哉×無関心女中】
直哉の声は、情欲よりも深い、底なしの絶望に震えていた。
彼は、自ら帯を解こうとしたの白い指先を、縋るような力で包み込む。
「体だけ手に入れてもしゃあない。……俺はお前が欲しい。
お前のその、何も映してへん瞳が、俺だけに焼かれて、俺なしでは生きていけんくなる……そんな、中身が欲しいんや」
直哉は彼女を抱き寄せることすらできず、ただ至近距離でその凪いだ瞳を覗き込む。
「けど、お前は違う。
俺のことなんて欠片も求めてへん。
…ただの『仕事』として、俺を処理しようとしとる。それが…それが死ぬほど嫌なんや、ボケッ」
叩きつけられた直哉の熱情を、は静かに、けれどひどく困ったように受け止めた。
彼女の眉が、わずかに悲しそうに下がる。
「……ですが、直哉様。
それは、あなたが仰ったことではありませんか」
「……え?」
「私には何も手に入らない。
美しい着物も、煌びやかな外の世界も……。
そして、あなたの隣に立つ権利も、何一つとして望んではいけない。そう教えたのは、直哉様です」
の声には、恨み言の一つも混じっていない。ただ、事実を淡々と並べているだけだ。
「…欲しがれと言われても、私には、そのやり方すらわからないのです」
直哉の喉が、引き攣ったように鳴った。
自分が彼女に刻み込んだ「呪い」が、今、最大の毒となって自分に返ってきている。
「……せやな。俺が言うたな。……お前のこと、何も知らん価値なんかない、地味で汚い小道具やて」
直哉は、顔を覆っていた手を力なく落とし、自嘲的な笑みを浮かべた。