第4章 【直哉×無関心女中】
は、目の前で折れ、震えている主の姿をじっと見つめていた。
禪院直哉。
この家で最も高貴で、最も傲慢で、誰よりも「美」に潔癖だった男が、今は泥にまみれた敗北者のような顔をして自分に縋っている。
どうすれば、この人は救われるのだろう。
彼女の思考は、どこまでも淡々と、事務的な結論へと辿り着いた。
(……この方は、二度と同じ女性を抱くことはない)
屋敷の噂、そして実際に彼が連れてくる女性たちの顔ぶれ。
一度手に入れ、その中身を暴いてしまえば、彼は途端に興味を失う。
それは、彼が飽き性だからではなく、彼が求める「完璧な美」がどこにも存在しないことを、その都度確認している作業のようにも見えた。
(私のような下賤な女を抱くのを躊躇して、こんなに拗らせていらっしゃるのなら……。一度差し出してしまえば、きっと満足して、興味を失ってくださるはず)
それが、彼女なりの慈悲だった。
今日磨き上げた廊下を、明日も同じように磨くために。この嵐のような直哉の執着を、凪に変えるための最短ルート。
「……わかりました」
静かな声。は直哉の肩をそっと押し通るようにして、彼の部屋の襖を開けた。
主の許可も待たず、月明かりだけが差し込む暗がりの部屋に足を踏み入れる。
「……おい、なんや」
直哉の掠れた声を背に受けながら、は迷いなく腰の帯に手をかけた。
するり、と解かれた帯が畳の上に音もなく崩れ落ちる。
「……お望みなら、どうぞ。直哉様」
着物の合わせに指をかけ、白い肌が露わになろうとしたその瞬間。
「——なんしとんねん、お前!!」
横から伸びてきた直哉の大きな手が、乱暴に、けれど必死な力で彼女の着物の前をガッと閉ざした。