第2章 天才的なアイドル様☆ 【ヒロアカ 爆豪×アイドル】
「デビューして半年。私たち、同期のはずなのにさ。だけ見てればいい、みたいな空気……正直、きついよね」
「SNSでものことしか書かれてないし。今日の警護してたプロヒーローだって、あの子のことばっか見てた気がする」
隅の席で衣装を畳んでいた一人が、唇を噛み締める。
実力の差に人気の偏り。
同じステージに立ちながら、スポットライトのほとんどを奪っていく「天才」への羨望は、いつしか澱のような僻みへと変わっていた。
「……私たちは、あの子の引き立て役じゃないんだけどな」
そんな陰口が飛び交っていることなど、は百も承知だろう。
だが、彼女にとって「仲良しごっこ」など、頂点へ登るための足場にもならない。
地下の階段を駆け上がる彼女の足取りは、迷いなく速い。
その瞳には、控え室の湿った空気など微塵も映っていなかった。
見据えているのは、もっと高く、もっと眩しい場所ーー。
深夜の事務所。
鏡張りのレッスンルームには、激しい足音と荒い呼吸の音だけが響いていた。
「……ッ、はぁ、はぁ……」
は膝を突き、床に滴る汗を見つめた。
肺が焼けつくような感覚。
限界を超えてなお、体が動くことを求めている。
鏡の中に映る自分の瞳は、あの昼間のステージで見せたものと同じ、どす黒いほどの執念を宿していた。
彼女には誰にも言えない「秘密」がある。
ここは二度目の人生だ。
前世でも、彼女はアイドルだった。
小さなライブハウスから始まり、泥水を啜るような下積み時代を経て、ようやく掴み取った夢の舞台ーー武道館。
チケットは完売し、あとは最高のステージを見せるだけだった。
だが、運命はあまりにも無慈悲に幕を下ろした。
一人の、歪んだ愛を抱いたファン。
「自分のものにならないなら、いっそ……」
「……っ!?」
そんな身勝手な絶望の果てに、刃を突き立てられた。
冷たいアスファルトの上で薄れていく意識の中、最後に見たのは、自分が立つはずだったステージに降り注ぐライトではなく、無機質な月光だったーー。