第2章 天才的なアイドル様☆ 【ヒロアカ 爆豪×アイドル】
爆破の個性を宿したその手は今日、彼女を「守る側」としてそこにいた。
「ハッ、半年でこれかよ」
自分と同じ半年という月日を、彼女もまた死に物狂いで駆け抜けてきたのだろう。
地下から這い上がろうとするその執念が、爆豪の傲慢な自尊心を心地よく逆撫でする。
「……Re:IX。 」
無意識にその名を口の中で転がす。
彼女の存在は自分を脅かす「未知の脅威」であり、この退屈な世界で唯一自分を本気にさせる可能性を持った何かだった。
「次会う時まで、さっさと這い上がって来い」
暗い部屋の中、爆豪の口角が吊り上がる。
彼女の次のライブスケジュールを無意識に指が追っていたことに気づき、彼は盛大に舌打ちをした。
ライブの熱狂が冷めやらぬ、狭く薄暗いライブハウスの控え室。
充満する制汗剤の匂いと、興奮冷めやらぬメンバーたちの喧騒が入り混じっていた。
「お疲れ様ー! 今日のステージ、マジで過去最高だったよね!」
「物販の列、結構伸びてたよ。半年でこれって凄くない?」
鏡に向かってメイクを落とす者、スマホでエゴサに耽る者。
9人の少女たちは、それぞれのやり方で戦いの余韻に浸っていた。
だが、その輪の中心にいるべき人物だけが、周囲の空気と明らかに乖離していた。
は、誰とも言葉を交わすことなく、淡々とステージ衣装を脱ぎ捨てていた。
「……あ、。この後の反省会兼ねて、みんなでパンケーキ食べに行かない? 」
一人のメンバーが控えめに声をかけたが、は振り返りもせず、私服のパーカーのジッパーを上げた。
「ごめん、パス。次の新曲の振り入れ、完璧にしときたいから」
短くそれだけ告げると、スポーツバッグを肩にかけ、出口へと向かう。
「えっ、でも……」
「お先、お疲れ」
引き止める声が届く前に、扉が閉まった。
残された控え室に、気まずい沈黙が流れる。
「……相変わらずだよね。あの子」
誰かがぽつりと溢した。
その声には寂しさと、隠しきれない刺々しさが混じっていた。