第1章 レンズ越しの体温 【ヒロアカ 轟焦凍×モデル】
食事を共にし、極寒のスタジオで肌に熱を分け合った、あの少しだけ特別だったはずの空気。
それらがすべて「仕事」という大きな枠組みの中に綺麗に収められてしまったような、形容しがたい寂しさ。
(……そうだ。仕事なんだから、これが正しい)
自分に言い聞かせ、轟は正面を見据えた。
フラッシュの光の海の中で、隣に立つ彼女はどこまでも遠くそして美しかった。
記者会見は、その後も滞りなく進行した。
二人のスマートな受け答えは、まさに「ブランドの顔」に相応しい気品があると記者たちを唸らせ、会見は大成功のうちに幕を閉じた。
スタッフたちの「お疲れ様でした!」という声が飛び交う中、二人は壇上を降りる。
控室へと続く廊下を歩きながら、轟は一度も隣の彼女と目を合わせることができなかった。
轟の横顔は、会見をやり遂げた安堵よりも、何かに思い悩んでいるような陰りを見せている。
隣を歩くはそんな彼のわずかな変化に気づき、そっと視線を送った。
(……少し、元気がないかしら)
彼女は先ほどの自分の回答を思い出す。
「仕事のパートナー」という言葉が、実直な彼を少しだけ突き放してしまったのかもしれない。
けれど、あの場ではあれが彼を守るための最善だった。
「ショートさん、お疲れ様。完璧な会見だった」
控室の前で立ち止まり、彼女は柔らかな微笑みを向けた。
いつもの、公人としての完璧な笑顔だ。
「……ああ。君のフォローのおかげだ」
「ふふ、そんなことないよ。それじゃあ、今日はこれで。また、次の現場で会いましょう」
彼女が踵を返しいつものように軽やかに去ろうとした、その時だった。
「……あの、待ってくれ」
呼び止める声に、わずかな焦燥が混じっている。
が不思議そうに振り返ると、そこには何かを決意したような、強い光を宿した轟の瞳があった。