異世界転生悪役令嬢だと思ったら、本当の悪女はヒロインだった
第25章 公開聴取 後編
「つまり」
水晶を掲げる。
「物語ではなく」
一瞬、ノア先輩は私を見る。
そして言った。
「事実を確認できる、ということです」
リリアーナの顔が、わずかに強張った。
だがアルベルトは笑った。
「いいだろう」
自信に満ちた声。
「やってみろ」
彼はリリアーナの肩を抱く。
「リリアーナが嘘をつくはずがない」
ノアは軽く頷いた。
「ええ」
とても穏やかな声で言う。
「私も、そう思っております」
そして。
水晶に魔力を流した。
光が広場に広がる。
空中に、ひとつの映像が浮かび上がった。
それは——学院の温室。
エミリアとリリアーナが、初めて二人きりになった日の光景だった。
そして、映像の中で。
誰もいないことを確認したリリアーナが、ゆっくりと笑った。
——その瞬間。
広場の空気が、音を立てて崩れた。
空気が、凍った。
――あ。
その瞬間、私は確信した。
物語が、壊れる。
広場の上空に浮かぶ記憶映像。
そこに映っているのは、学院の温室。
私とリリアーナが、初めて二人きりになった日の光景だ。
――そして。
誰もいないことを確認した彼女は――笑った。
今まで一度も見たことのない顔で。
柔らかくて、儚くて、守ってあげたくなる聖女の笑顔ではない。
冷たい。
計算された笑みだった。
「……え?」
広場のどこかで、誰かが声を漏らした。
当然だと思う。
だって、あのリリアーナが。
あんな顔をするなんて。
誰も想像していなかったはずだから。
映像の中の彼女は、私を見て言った。
『あなたって、本当に便利ね』
いゃー!あなたの影の顔は立派でしたよ。
当時を思い出して、私は頷て見せた。
ざわめきが走る。
私はゆっくり息を吐いた。
胸の奥に溜まっていたものが、少しだけ軽くなる。
——大丈夫。