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異世界転生悪役令嬢だと思ったら、本当の悪女はヒロインだった

第25章 公開聴取 後編


ここまでは、予定通り。
アルベルト殿下の声が響いた。

 
「……これは、何だ」

 
 信じられない、という声だった。

 ――いや、ある意味貴方も、いや、関わった皆が被害者なんですよ。

 私はそちらを見ない。
代わりに、隣に立つ人を見る。
ノア先輩。
彼はいつものように静かだった。
騒ぎ立てるでもなく、得意げになるでもなく。
ただ、観察している。
まるで研究対象を見る学者みたいに。

 
「殿下」

 
 ノア先輩は丁寧に一礼した。

 
「こちらは先ほど申し上げた通り、記憶映像です」

 
 落ち着いた声。

 
「編集も、改変も行っておりません」

 
 少し間を置いて。

 
「つまり」

 
 淡々と言う。

 
「実際に起きた出来事でございます」

 
 広場がざわめく。

 
「嘘だ……」

 
「リリアーナ様が……?」

 
「何かの間違いでは……」

 
 でも――映像は止まらない。
映像の中の私は、ただ困った顔をしていた。

 
『どういう意味ですか……?』

 
 そう聞く私に、リリアーナは笑った。

 
『だってそうでしょう?』

 
 くすくす笑いながら言う。

 
『あなたが悪役をやってくれるから、私は聖女でいられるのよ』

 
 広場が、完全に静まり返った。
私は目を閉じる。あの日。
この言葉を聞いた瞬間、頭が真っ白になった。
怒りとか悲しみとか、そういう感情じゃない。

 ただ。

 世界がひっくり返ったみたいだった。

いやー!リリアーナ嬢は大した役者でしたよ。

 あの時の驚きは今も忘れられない。
でも。
今は違う。
私はゆっくり目を開ける。
視線の先。
リリアーナが震えている。

 
「ち、違う……」

 
 小さく首を振っていた。

 
「これは……」

 
 涙が浮かんでいる。

 ああ。

 まただ。

 私は静かに口を開いた。

 
「泣くんですね」

 
 
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