異世界転生悪役令嬢だと思ったら、本当の悪女はヒロインだった
第24章 公開聴取 前編
午後。
王立学院・大講堂。
普段は式典や講義に使われる広い空間が、今日は異様な緊張に包まれていた。
上段には教師たち。
中央には学院騎士。
そして壇上には、王家の紋章が掲げられている。
そこに座っているのは――アルベルト王太子。
この国の次期国王。
その存在だけで、生徒たちの背筋は自然と伸びる。
講堂にはすでに何百人もの生徒が集まっていた。
「まさか本当に公開聴取になるなんて……」
「相手、公爵令嬢だぞ?」
「でも被害者はリリアーナ様らしい」
ざわめきが広がる。
その中央に、私は立っていた。
エミリア・ヴァレンシュタイン。
視線が痛いほど集まっている。
けれど私は、姿勢を崩さない。
公爵家の令嬢として。
そして――自分が何もしていないと分かっているから。
「では」
壇上から、落ち着いた声が響く。
アルベルト王太子が口を開いた。
「本日の件について聴取を行う」
静寂が落ちる。
「まずは被害を訴えた者」
彼は視線を向けた。
「前へ」
その瞬間だった。
講堂の空気が――変わった。
ゆっくりと前へ歩いてくる少女。
白い手袋。
震える指先。
今にも泣き出しそうな打ち震える瞳。
リリアーナ。
彼女が壇上の前に立った瞬間。
講堂の空気が柔らかくなる。
不思議なくらいに。
「……リリアーナ様」
誰かが小さく呟く。
彼女が頭を下げた。
その動作だけで、周囲の生徒たちの表情が変わる。
優しい顔。
守りたいという視線。
そして――私を見る目が、わずかに鋭くなる。
私はその変化を見ていた。
まただ。
私は内心彼女のしつこさにある意味の賞賛さえ覚えた。
げんなりするけど……
リリアーナが口を開く。
「わ、私は……」
声が震える。
「私が悪いんです……」
講堂がざわめく。
「違う!」
誰かが叫ぶ。
「君は悪くない!」
「そうだ!」
「リリアーナ様は被害者だ!」
私は目を細めた。
まだ何も起きていない。
まだ何も語られていない。
それなのに――空気が決まっている。
リリアーナは震える声で言う。
「図書館で……」
涙が『綺麗に』一粒落ちる。
「本を読もうとしていただけなのに……」
講堂の空気が一気に傾いた。