異世界転生悪役令嬢だと思ったら、本当の悪女はヒロインだった
第23章 公開断罪 後編
私は少し驚く。
「王太子殿下をですか?」
「必要なら」
「大胆ですね」
「ええ」
ノアは平然と言う。
「後輩が冤罪で処刑されるのを見過ごすほど、冷たい人間ではありません」
私は思わず笑った。
「処刑はされませんよ」
「そうですね」
ノアも少し笑う。
それからふと、真面目な声で言った。
「エミリア嬢」
「はい」
「あなた、昨日も今日も」
少し考えてから続ける。
「ずいぶん落ち着いていますね」
私は答える。
「慌てても、状況は良くなりません」
仕方ない……と私は肩を竦めた。
「確かに」
「それに」
私は少しだけ微笑んだ。
「ノア先輩がいますから」
ノアは一瞬、言葉を失った。
それから小さく息を吐く。
「……それは困りますね」
「なぜです?」
「あなたがそう言うと」
彼は言った。
「先輩として、絶対に負けられない気がする」
私はくすっと笑った。
「頼りにしています」
ノアは掲示板をもう一度見る。
そして静かに言った。
「では」
「はい」
「午後の講堂で」
眼鏡の奥の瞳が、わずかに鋭くなる。
「物語をひっくり返しましょう」
その頃――学院の別棟の窓辺。
リリアーナはまたしても手紙を折っていた。
宛先はもちろん――アルベルト
彼女は甘い声で呟く。
「エミリア様」
そして微笑んだ。
「今度こそ」
その瞳は冷たい。
「逃げられませんよ」
学院の鐘が鳴る。
午後――王太子による公開聴取が始まろうとしていた。