異世界転生悪役令嬢だと思ったら、本当の悪女はヒロインだった
第23章 公開断罪 後編
私は首をわずかに傾けた。
「はい」
「……」
「ですが」
私は静かに言った。
「泣いている方が、必ず正しいとは限りません」
その瞬間――中庭の空気が変わった。
そのときだった。
「……なるほど」
人混みの奥から声がした。
生徒たちが振り向く。
歩いてきたのは、銀縁眼鏡の青年。
ノア・アルケイン。
彼は手帳を閉じた。
「公開断罪とは、ずいぶん大胆ですね」
カインが眉をひそめる。
「ノア・アルケイン」
ノアは軽く頭を下げる。
「途中から聞いていました」
そして指を一本立てた。
「証拠」
二本。
「貸出記録あり」
三本。
「目撃者ゼロ」
そして静かに言った。
「それで公開断罪ですか」
中庭が凍りつく。
ノアは微笑む。
「レオンハルト卿」
眼鏡を押し上げる。
「あなた、騎士としては優秀ですが」
少し間を置いてから言った。
「推理は壊滅的ですね」
誰かが吹き出した。
「ぶっ」
カインの顔が赤くなる。
ノアは続けた。
「あなたは“泣いた人”を守ろうとしている」
そして静かに言った。
「しかし」
「泣いた人が、真実を語っているとは限りません」
中庭の空気が変わった。
カインは初めて言葉を失う。
そして私は思った。
――この件は、これで終わりではない。
なぜなら。
この学院には。
まだ一人――もっと大きな舞台を用意する人物がいるからだ。
その頃――学院の別棟の窓辺で。
リリアーナ。
彼女は静かに手紙を折っていた。
宛名はアルベルト殿下へ。
リリアーナは微笑む。
「エミリア様」
甘い声で囁いた。
「次は、もっと大きな舞台で泣きましょう」
その瞳は。
泣き虫の少女のものではなかった。
彼女はもっと大きな物語を動かそうとしていた。
――そして、その兆しはすぐに現れた。
翌朝。
王立学院の掲示板の前には、いつも以上の人だかりができていた。
「おい見ろよ」
「え、まじ?」
「これ……」
生徒たちのざわめきが、波のように広がる。
私は人混みの後ろからそれを眺めていた。
少し背伸びをして、掲示板を見る。