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異世界転生悪役令嬢だと思ったら、本当の悪女はヒロインだった

第22章 公開断罪 前編


今にも泣きそうな瞳――完璧な弱者の姿だった。

 
「よくない!」

 
カインは断言した。

 
「弱き者を守るのが騎士だ!」

 
令嬢たちがざわめく。

 
「素敵……」

 
「さすがレオンハルト様……」

 
そしてカインはゆっくりと視線を向けた。
その先にいるのは――本を読んでいる私だった。
エミリア・ヴァレンシュタイン。
私はページをめくる手を止め、静かに顔を上げた。
周囲の空気が、わずかに張りつめる。

 
「エミリア・ヴァレンシュタイン公爵令嬢」

 
カインの声は真剣そのものだった。

 
「君に問いたい」

 
私は本を閉じる。

 
「はい」

 
声は穏やかに。
公爵家の令嬢として、礼儀は崩さない。
カインは言った。

 
「君は図書館で、リリアーナ嬢の本を奪ったのか?」

 
中庭が静まり返る。
私は少しだけ考えた。
そして答えた。

 
「いいえ」

 
あまりにもあっさりした返答だった。
カインの眉が寄る。

 
「だが彼女は泣いていた!」

 
私は穏やかに頷いた。

 
「ええ、泣いていましたね」

 
「ならば!」

 
カインの声が強くなる。

 
「君が何かしたのではないのか!」

 
私は静かに言った。

 
「いいえ」

 
その声は落ち着いていた。
感情も怒りもない。
ただ事実を述べるような声。

 
「レオンハルト様」

 
「何だ」

 
「確認してもよろしいでしょうか」

 
私はポケットから紙を取り出した。
ひらり、と風に揺れる。
図書館の貸出票。
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