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異世界転生悪役令嬢だと思ったら、本当の悪女はヒロインだった

第21章 カイン・レオンハルト 後編


私は続ける。

 
「一番簡単に騙されるやり方ですよ」

 
カインの拳が震えた。
怒りかそれとも……わずかな疑念か。

 
「……リリアーナを侮辱するな」
 

私は肩をすくめる。

 
「してません」

 
そして言った。

 
「ただ、あなたが簡単すぎるって言ってるだけです」

 
その瞬間。
カインの顔が真っ赤になった。

 
「エミリア!」

 
彼が声を荒げたとき。
奥の棚から、静かな声がした。

 
「……やれやれ」

 
私もカインも振り向く。
そこにいたのは、一人の少年。
本を閉じながら歩いてくる。
ノア・アルケイン。

宮廷魔術師であり、学院の生徒会員。
そして学院一の頭脳。
彼は眼鏡を押し上げながら言った。

 
「レオンハルト卿」

 
カインが睨む。

 
「……聞いていたのか」

 
「ええ」

 
ノアは微笑む。

 
「全部」

そして、さらりと言った。

 
「あなた、騎士として一番危険なタイプですね」

 
図書館の空気が一瞬で凍る。

 
「何だと?」

 
ノアは平然としていた。

 
「証拠ゼロ」

 
指を一本立てる。

 
「証言一つ」

 
もう一本立てる。

 
「そして」

 
最後に言った。

 
「思い込みで断罪」

 
カインの顔が強張る。ノアは静かに続けた。

 ――さすが学院随一の知能派!カインは顔を真っ赤に染めこそ反論できない。

 
「レオンハルト卿」

 
その声は穏やかだった。
だが、刃のように鋭い。

 
「あなたは“正義の騎士”じゃありません」

 
一歩近づき、こう言った。

 
「ただの都合のいい正義の使い手です」

 
その瞬間。
カイン・レオンハルトの心に、初めて――疑念が落ちた。
そしてその遠くで。
学院の廊下の窓辺で。
一人の少女が静かに笑っていた。
リリアーナ。

 
「……ふふ」

 
甘く、弱そうな声で呟く。

 
「やっぱり」

 
その瞳はいつものように潤んで揺れる弱者の瞳ではない。――冷たい。

 
「カイン様は、簡単ですね」

 
物語はまだ始まったばかりだった。
 
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