異世界転生悪役令嬢だと思ったら、本当の悪女はヒロインだった
第20章 カイン・レオンハルト 前編
「カイン様」
「何だ」
「私、泣いていませんよね」
「……」
「だから犯人ですか?」
カインの顔がわずかに歪む。
「君は……」
彼は低く言った。
「冷たい」
図書館の空気が少し重くなる。
「人が泣いているのに、平然としている」
私は静かに答える。
「泣いていないと、信じてもらえないんですか?」
「違う」
カインは即答した。
「君は冷静すぎる」
その言葉に、私は一瞬だけ黙った。
そして小さく笑う。
「なるほど」
「……何だ」
「カイン様」
私は本棚に本を戻しながら言った。
「あなたは、もう答えを決めているんですね」
「……」
「“エミリアは悪役”って」
カインの表情が固まる。
彼は気づいていない。
自分が、どれほど思い込みで動いているのか。
「リリアーナは弱い」
彼は言う。
「君は強い」
そして。
「だから君が加害者だ」
それを耳にして私は笑いそうになった。
強いから加害者?笑わせる。
私は振り向いた。
「それ、証拠ですか?」
沈黙。
「その理論で行くと、今カイン様は私を虐めてることになりますね」
「なっ……!」
にっこり笑ってカインに問いかける私。
カインは反論しようと声を上げたが言葉がでない。
そして、カインは答えない。答えられない。
でも、彼の目は揺れない。
なぜなら。
彼は自分が正しいと信じているから。
それが彼の強さで――同時に弱さでもある。
「……君みたいな人間が」
カインは低く言う。
「弱者を追い詰める」
その言葉に、私は初めて、少しだけ怒った。
「カイン様」
「何だ」
「あなた」
私は静かに言う。
「“泣く人”を守ってるんじゃないですよ」
カインの眉が寄る。
「何?」
私は彼の目をまっすぐ見た。
「“泣いた人”を守ってるだけです」
図書館が静まり返る。
「それ」
私は続ける。