異世界転生悪役令嬢だと思ったら、本当の悪女はヒロインだった
第19章 ノア・アルケイン 後編
彼は壁にもたれたまま、腕を組んでいた。
「質問してもいいですか」
アルベルトが眉を寄せる。
「何だ」
ノアは床の魔石を見る。
そして言った。
「魔力紋が似ている」
「それだけで犯人ですか?」
沈黙。
アルベルトは答えない。
ノアは続ける。
「魔力紋の偽装は、初級魔術です」
彼はポケットから小さな道具を取り出した。
青い水晶。
「魔力残滓測定器」
床にかざすと水晶が光る。
ノアはそれを見て、少し笑った。
「やっぱり」
アルベルトが言う。
「何がだ」
ノアは答える。
「暴走が起きた位置」
彼は床を指差す。
「リリアーナの足元」
――重い沈黙……
ノアは続ける。
「普通、暴走魔石は中央に置く」
「被害が大きくなるから」
「でもこれは」
彼は肩をすくめる。
「被害が出ない場所」
アルベルトの瞳が揺れる。
ノアは静かに言う。
「殿下」
「もしエミリア様が犯人なら」
「自分の魔力を偽装して」
「自分の近くに置いて」
「しかも聖女の足元で爆発させると思います?」
またも重い沈黙……
ノアは小さく笑う。
「そんな下手な犯罪」
「エミリア様はやりません」
私は思わず彼を見ると彼は肩をすくめる。
「だって」
灰銀の瞳がこちらを向く。
「あなた、もっと賢いでしょ」
アルベルトは長く息を吐いた。
そして言う。
「……つまり」
ノアは答える。
「自作自演の可能性が高い」
その言葉で。
空気が変わった。
疑念の向きが、ゆっくりと――確実に反転した。
――その夜。
私は日記を書く。
ったく……あのお嬢さんは何が憎くて私に嫌がらせばかりするんだ?いい加減面倒になってきたぞ。
ゲームしてた時もリリアーナの性格はあまり好きではなかったが、実際絡むと面倒臭い女だと確信していた。
しかし、ノア・アルケイン――彼には助けられた。
アルベルトの判断を疑念に変えてくれた。
ちなみにノアも攻略対象だ。
しかし、悪役令嬢として、喧嘩を吹っかけられた私は呑気に恋愛してる暇などない。
リリアーナを潰して、バットエンドを回避する。
それだけだ。