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異世界転生悪役令嬢だと思ったら、本当の悪女はヒロインだった

第17章 私が主役 後編


どうして――

物語の中心にいるはずの私が、こんなにも焦っているの?
 このままでは――負ける。

その考えが、頭から離れなかった。

――夜の寮室。
窓の外では風が吹いている。
カーテンが揺れるたびに、影が動く。
まるで誰かに見られているみたいで、落ち着かない。
私は机に両手をついた。
指先が白くなるほど力を込める。

違う……

違う……違う!違う!!
私は聖女――物語の主人公。

――負けるはずがない。

最初は、簡単だった。階段で泣いたとき。
みんな、すぐに私の味方になった。
令嬢たちが駆け寄ってきて
 

「大丈夫?」

 
「ひどいわ……」
 

そう言ってくれた。
アルベルト様も、心配そうな顔をしてくれた。
それだけで十分だった。物語は、私のものだった。

なのに……いつからだろう?

空気が変わったのは……

 
「また事故?」

 
「偶然かしら……」

 
小さな疑問。ほんの少しの沈黙。
 それだけで、胸がざわつく。
原因は分かっている。

――エミリア。
あの女……普通なら。
疑われたら怒る……泣く。
言い訳する。
そうやって、物語が動く。
でも彼女は違う。何もしない。
 
――ただ、そこにいる。

いつも通り授業を受けて、いつも通り首席を取り、いつも通り、誰よりも静かに立っている。

――それだけ。

それだけなのに――

どうして、あんなに目立つの?
 
中庭で見た光景が、頭から離れない。
令嬢たちが笑っている。
 その中心にいるのは、私じゃない。
――エミリア。
誰も彼女を囲んでいるわけじゃない。
媚びてもいない。それなのに、自然に人が集まっている。
胸の奥が、ぎゅっと締めつけられる。
羨ましい。
悔しい。
そして――許せない。

私は聖女。
奇跡を起こす力を持っている。
平民の私が、ここまで来た。
物語の主人公になるために。
なのに――どうしてあの女が、何もしないで全部持っていくの?
私は鏡を見る。
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