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後宮は恋愛する暇はありません!なのに皇帝がやたら近い件!

第22章 暁辰と琳 前編


月だけが揺れている。
 

「ねぇ……本当に曲者が来るの?」


白宝様がヒソヒソ声で聞く。
私はゆっくり頷いた。
白虎宮の奥。
あの排水口。
夜風が冷たい。

来る……!

胸がざわつく。
怖い。
でも逃げられない。

だってこれは――

あの人に頼まれたことだから……

 素服姿の、あの貴人。
名前も身分も知らない。ただ、妙に威圧感がある男。
彼は言った。
 

「満月の夜、池を見張れ」


それだけだった。
肩の震える私を励ますように白宝様が、がっちりと肩を掴んでくれる。
 その温かさに少し救われた。
 
――その時。
 
――ザバッ
 
水面が揺れた。
私と白宝様は息を止める。
排水口から、黒い影が這い出てきた。
一人。
二人。
三人。
黒装束の男たち。
白宝様が小さく呟く。

 
「……本当に来た」


男たちは周囲を見回す。

 
「門は?」

 
「乳母が開ける」

 
「急げ」

 
その瞬間。
白宝様が石を踏んだ。
カチ。
全員の視線がこちらに向く。

 

――ピィィィィィッ!!

 
「走って!」


 懐から呼子を出して吹きながら、白宝様が叫んだ。
夜の後宮に、鋭い音が突き刺さる。

 
「曲者だ!!」

 
「白瑪宮だ!!急げ!!」
 

遠くで衛兵の声が上がる。
私は振り返らない。
振り返ったら、たぶん足が止まる。

来る……!!

その瞬間、背後で金属音が響いた。

ガンッ!!

 
「どきなさい!!」


聞き覚えのある声。
白宝様だった。
振り向くと、白宝様が曲者の腕を蹴り飛ばしていた。

 
「私は大将軍の娘よ!!舐めないで!!」


本当に強かった。
その辺の衛兵より強いというのは、どうやら本当らしい。
曲者がよろめいた隙に、衛兵が飛び込んできた。
その時一瞬の隙をついて、1人の曲者が躍りでてきた。
 けれど――男の一人が飛びかかってきた瞬間。
――鋭い風が走った。
キィン――鋭い金属音。
男の刀が、弾き飛ばされた。
私は思わず目を見開く。
いつの間にか、
私と男の間に、もう一人立っていた。
長い影。
夜の衣。
そして――抜き身の剣。
男が舌打ちする。

 
「余計な奴が……!」

 
斬りかかる。でも、その人は動かなかった。
ただ手首をわずかに返す。
一瞬。
本当に、一瞬だった。
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