後宮は恋愛する暇はありません!なのに皇帝がやたら近い件!
第22章 暁辰と琳 前編
白瑪宮。
満月の夜だった。
後宮の庭は、銀色の光に満ちている。
池の水面も、白い石畳も、すべてが静まり返っていた。
だが……静かすぎる。
――嵐の前のように。
私は、池の縁に立っていた。
そのすぐ後ろに――なぜか 白宝様。
「あのー……一応、曲者取りなので……」
私は振り返り、おずおずと言う。
「白宝様に何かあったら困りますので、寝殿にお戻り頂けますか?」
すると白宝様は、私の肩をがしっと掴んだ。
「何言ってるの!?」
声は小さいが、勢いはすごい。
「琳に何かあったら大変でしょ!?」
「それにこう見えて、私は大将軍の娘よ!」
胸を張る。
「軍幕育ちなんだから、その辺の衛兵より強いんだから!」
そう言って、私の肩をくるっと回して
池の方を向かせた。
「ほら、前見て」
二人で排水溝に視線を落とす。
暗い水面。
月だけが揺れている。