後宮は恋愛する暇はありません!なのに皇帝がやたら近い件!
第21章 課題 後編
「いいえ」
「帰ってくると」
声が低くなる。
「必ず泣いているの」
琳は考え込む。
玄珠は続けた。
「私はあの人を疑いたくない」
「だから」
「真実を見てきて」
玄珠の真摯な願いに琳は頭を下げて、承諾した。
『白虎妃の依頼』
最後に。
白虎宮。
白虎妃 白宝 は琳を見るなり駆け寄った。
「琳!」
「はい?」
「私のお願い聞いて!」
「……なんでしょう」
余りの勢いにたじろぐ琳に、白宝は真剣な顔で言った。
「庭の池の鯉が減ってるの!」
琳は沈黙した。
白宝は言う。
「絶対誰か食べてる!」
「犯人捕まえて!」
後ろで侍女たちが頭を抱えている。
琳は小さく息を吐いた。
「……調べてみます」
白宝はぱっと笑う。
「やった!」
琳はため息をこっそりつきながら、礼をすると白瑪宮を後にした。
その夜。
琳は自室で考え込んでいた。
皇后の台所の謎。
碧麗の衣の傷。
紅蘭の手紙。
玄珠の乳母。
白宝の鯉。
「……偶然?」
琳は首を振る。
「違う」
後宮に偶然などない。
どこかで、すべてが繋がっている可能性がある。
琳は小さく笑った。
「面白い」
洗濯場の下女だった少女は、まだ知らない。
この小さな依頼の裏に――後宮全体を揺るがす大きな秘密が隠れていることを。
そして――遠くの廊下の影で。
あの男が静かに呟いた。
「動き出したか」
皇帝暁辰 は、密かに笑った。
『第一の違和感 ― 台所の香草』
後宮の大厨房は、昼でも蒸気で白く霞んでいる。
料理人たちが鍋を振るい、下働きの女官が野菜を刻む。
琳は帳簿係の女官に声をかけた。
「少し帳簿を見せていただけますか」
女官は怪訝そうに眉をひそめる。
「見習い女官が?」
「皇后様のご命令です」
琳は予め皇后から託された玉佩を見せた。
皇后の拝礼を受けてる歴とした証拠だ。
玉佩を見た女官は慌てて、帳簿は差し出した。
琳はページをめくる。
……やっぱり
消えているのは――紫蘇、陳皮、香木の粉、山椒。
どれも料理ではなく、薬や香に使う材料だ。
しかも少量ずつ。
「これ、いつから減ってます?」