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後宮は恋愛する暇はありません!なのに皇帝がやたら近い件!

第19章 皇后と四妃との対面 後編


そして皇后瑠華が、穏やかに口を開いた。

 
「顔を上げなさい、琳」
 

琳は一瞬ためらったが、ゆっくり顔を上げる。
 漆黒の髪を半髷に結って、後ろ髪を垂らしている。
 黒目がちな髪と同じ黒光りする黒曜の瞳は意志の強さを物語っていた。
五人の視線が、一斉に集まった。
 後宮で最も重い視線だ。
白宝が小声で言う。

 
「かわいい子じゃない」

 
紅蘭は笑う。
 

「かわいい、だけでは後宮では生き残れませんわ」

 
碧麗が淡々と尋ねる。

「衣の毒。あれをどうやって見抜いた?」

 
琳は答える。

 
「洗濯場では、香料や染料の匂いを毎日扱います。
 あの衣には……水に濡れたときだけ出る苦い香りが残っていました」

 
四妃の目が、わずかに細くなる。
紅蘭が感心したように言う。

 
「嗅ぎ分けたの?」

 
「はい」

 
白宝が目を輝かせる。

 
「凄いね!犬みたい!」
 

紅蘭が吹き出した。玄珠は苦笑する。
碧麗は、しばらく黙って琳を見ていた。
そしてふっと微笑む。

 
「……なるほど。確かに、面白い子だ」

 
瑠華が茶を一口含む。

 
「琳」

 
「はい」

 
「あなたは今、見習い女官ね」

 
「はい」

 
「ならば覚えておきなさい」

 
瑠華の声は穏やかだった。
だが後宮の全員が、その意味を理解していた。

 
「後宮では――賢い者は、時に道具として使われる」

 
静かな沈黙――琳は頭を下げる。

 
「心得ております」

 
紅蘭が楽しそうに言う。

 
「この子、分かってるわ」

 
白宝が言う。

 
「ねえ、うちに来ない?」

 
碧麗がすぐに言う。

 
「却下」

 
玄珠が穏やかに続ける。

 
「まだ誰のものでもありませんよ」

 
そして皇后瑠華は、静かに微笑んだ。

 
「そう。まだ――ね…」

 
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