後宮は恋愛する暇はありません!なのに皇帝がやたら近い件!
第17章 茶会 後編
「ですが――」
扇の奥で目が細くなる。
「毒を見抜いた」
碧麗は短く言う。
「興味深い」
皇后瑠華が侍女に視線を向けた。
「報告は」
侍女は恭しく答えた。
「はい。毒は衣の袖口に染み込ませた薬草の粉」
「水に触れることで微かに揮発し、長く着れば体を弱らせるものだったと」
玄珠の目がわずかに動く。
「即効毒ではないのね」
紅蘭が言う。
「ええ……だからこそ見逃されやすい」
紅蘭の口調は場の空気を飲み込むようだった。
白宝は少し青ざめた。
「こ、こわい……」
「それって青龍妃様が着てたらどうなったんですか?」
碧麗は表情を変えない。
「弱る。そして医官にも原因は分からぬ」
皇后瑠華は静かに茶を置いた。
「……陰湿ね」
紅蘭が笑う。
「後宮らしいとも言えますわ」
その言葉に沈黙が落ちる。
その時、玄珠が静かに言った。
「でも……その琳という娘、ただの偶然で気付いたとは思えません」
碧麗も頷く。
「洗濯場の下女が毒を見抜くなど、本来ならあり得ぬ事だ」
白宝は首を傾げる。
「でもすごいですよね!」
「私、その子に会ってみたい!」
紅蘭は面白そうに笑う。
「白宝様はすぐ人に興味を持ちますわね」
皇后瑠華は静かに考えていた。
下女……毒を見抜く……そして事件を収めた……
それだけではない。
報告書には、こう書かれていた。
「事件の収束処理まで行った」
つまり――ただ気付いただけではない。
「どう収めるか」を考えた。皇后瑠華はゆっくり口を開く。
「その娘」
「昇格したのよね」
侍女が答える。
「はい」
「洗濯場の下女から、下級女官見習いへ」