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後宮は恋愛する暇はありません!なのに皇帝がやたら近い件!

第15章 事件を追え! 後編


沈黙。彼は私を見下ろす。

 
「誰に命じられた」

 
私は答えない。答える必要はない。
彼は短く息を吐いた。

 
「……好きにしろ」

 
その言葉は許可だった。
白虎宮の裏門。侍女の空き部屋。
私は窓の隙間から中を覗いた。
春鈴がいる。
机の上、小袋、灰色の粉。
その時――背後で声がした。

 
「そこまでだ」

 
私はゆっくりと振り向いた。暗闇の中。
あの方が立っている。私は跪いた。

 
「証拠は揃いました」

 
「言え」
 

「毒は医官房から盗まれた。糸は白虎宮のもの。仕込んだのは侍女春鈴」

 
「動機は」

 
私は静かに答える。

 
「命令です」
 

「誰の」

 
私は首を振る。

 
「まだ分かりません」

 
あの方は少しだけ笑った。

 
「だが、近いな」

 夜の回廊は静まり返っていた。
白い石畳に月の光が落ち、後宮の建物が淡く浮かび上がる。私は柱の陰に身を潜め、息を整えていた。
さっきまで——ここには確かに、あの人がいた。
黒い衣、冷たいほど落ち着いた声。けれど。

 
「……っ」

 
物音がした瞬間、その姿は影のように消えていた。
逃げた、というより最初からそこに存在していなかったみたいに。

さすがに早すぎるでしょ……

そう思った瞬間だった。
 遠くから、足音。
 ばたばたばた——

 
「捕らえたぞ!」

 
男の低い声が響く。私は思わず顔を出した。
そこでは、数人の宦官が一人の女を押さえつけていた。

 
「……春鈴」


 青龍妃・碧麗(びんりー)様付きの侍女。
昼間、私が疑っていた女だ。
春鈴は暴れようとするが、すぐに腕をねじ上げられる。

 
「むぐっ!」

 
猿轡が押し込まれた。声はもう出ない。

 
「連れて行け」
 

命令が落ちる。

宦官たちは迷いなく春鈴を引きずるようにして、暗い廊へと消えていった。私は柱の影からそれを見送る。

終わった……?
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