夢幻泡影②【呪術廻戦(死滅回游〜)/伏黒 恵オチ】
第14章 天使と巡り会うオラトリオ【東京第2結界】
――平安
「くそっ! おい、晴明‼ 派手にやり過ぎだろ‼ こっちまで巻き込まれたぞ」
そう怒鳴ると、彼――安倍 晴明は上品に声を立てて笑った。
「すまん、すまん。怪我はしていないか?」
狩衣の裾をひらりと揺らし、晴明が服の泥を払ってくれる。
「ったく、相変わらず呪霊に容赦ねぇな。だいたい、オマエの【陰陽術式】どうなってんだよ」
「私の持つ陰陽術の才を最大限 活かせるよう編み出したのだ。反動も少ないし、手数も多い。五条家の【無下限呪術】、禪院家の【十種影法術】、加茂家の【赤血操術】と並べても遜色ない出来だ」
「あのなぁ、呪術の基本はリスクを背負うことだ。そんなん、すぐ限界が来るぞ」
ジト目で見上げると、晴明は得意げに口角を上げた。
「そんなものは分かっているよ。この術式は、自ら“縛り”を科すことで完成する。力を得たいと思えば、それだけ大きな“縛り”が必要だ。つまりな――……」
――守りたいものが大きければ大きいほど、この術式は強くなる。
「……オマエの守りたいものは何だよ、晴明」
すると、彼は一度 目を丸くし、艶やかな美しい笑みを浮かべた。
「守りたいもの? そんなもの決まっているだろう――この国さ」
――呪術全盛の平安時代。
――負の感情が渦巻く京の都。
その高潔なまでの晴明の理想は……その心は……次第に壊れていった。