夢幻泡影②【呪術廻戦(死滅回游〜)/伏黒 恵オチ】
第13章 戻らないプラーチド【東京第2結界】
「【オン・コロコロ・センダリ・マトウギ・ソワカ】」
薬師如来の真言で【反転術式】をかけていく。
中には そこまでする必要のない者もいたが、まともな治療ができる環境ではない。放っておくことで、逆に悪化してしまう可能性もわずかだが存在する。
「あ、ありがとございました。助けていただいたのに、ひどい態度を……」
頭を下げる男性は、この場のまとめ役なのだろう。先ほど、若者たちに歯向かっていた人だった。
「いえ。あの状況では無理のないことです」
それに、本当に礼を言われる理由はない。
自分の欲を満たすため、あるいは何の理由もなく他者から奪う理不尽さ――あぁいう輩が、星也は自分の次に嫌いだった。
だって……奴らの搾取するその手の先に、星良がいないとなぜ言える?
奴らの次の標的が、詞織や詩音、伏黒や津美紀でない保証を誰がしてくれる?
そうだ。結局、自分は偽善者でしかない。彼らを助けたわけではなく、自分の心の平穏のために殺したにすぎないのだから。
星也はビルの中から襲ってきた若者たちの死体を外へ出し、傍らに寝かせ……ようやく胸が痛んだ。
死んで終わればただの物言わぬ骸。魂が失われれば、もはや善人も悪人も関係ない。
そのとき、小さな衝撃が伝わった。足元を見ると、幼い少年と少女が足下にしがみついていた。
顔立ちが似ている。兄妹だろうか。