第6章 クレッシェンドに高まる熱【賭け試合】
「――ルールその1『賭け試合(クラブ)について口にしてはならない』。答えろ。誰に聞いた? オマエを殴るのは その後だ」
なるほど。どうやら筋肉バカというわけではないらしい。そこそこ頭が回るし、役目に忠実。
「名前は知らない。殺したから(嘘)。一月(ひとつき)くらい前だ。威勢だけのクズがいたろ(出まかせ)」
真っ直ぐに見据えると、「一月前、コンドーが消えた」と小柄な男が屈強な男に耳打ちする声が微かに聞こえた。続いて、小柄な男がどこかへ連絡を取り始める。
ここまでの やり取りの流れからして、この二人より上の立場の人間、運がよければ秤だ。もう一押しだな。
「その穴を埋めてやる。なんなら、胴元の前でアンタを転がしてみせようか?」
馬鹿正直に「会わせてくれ」と頼めば、警戒されるだけ。秤の名前も、自分たちが知らないはずの情報だから出すのはNG。それとなく、胴元に会わせるように誘導する。
伏黒の意図に気づいたのか。余計なボロを出さないよう、虎杖が自主的に口を噤み、交渉を任せてくれる。すると、小柄な男が「おい」と呼びかけてきた。
「胴元からお許しが出た。今日のシード枠にソイツを当てる。ただし、出場するのはソッチだ」
そう言って、男が虎杖を指さす。好都合――元よりそのつもりだ。
「駄目だ。俺が出る」
「胴元が、テメェは食えねぇとよ、嫌ならこの話はナシだ」
思惑を読まれないよう わざと渋って見せると、男がニヤついた笑みを浮かべた。
『食えねぇ』、ね……。
妙な言い回しに違和感を覚え、それとなく周囲を確認すると、男の頭上に監視カメラを見つける。
「分かった。それでいい」
開始時間や集合場所などの説明を軽く受け、伏黒たちはその場を後にした。
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