第5章 心を揺さぶるエレジー【パンダだって/葦を啣む】
水のように流されながら、周りに身を任せて生きてきた。
周りの意見には全て『Yes』、面倒なことは極力避け、声を掛けてくる女たちは受け入れるスタンス。
けれど、女たちと関わる人数が増えると面倒だと気づいたので、好みの女はキープ。そうじゃない相手は後腐れない関係で遊んだ。
普通の人間には視えないものが視え始めたのは、両親の葬儀が終わった頃だった。
親戚の家の近くで呪霊に絡まれていたところを とある術師に助けられ、呪術高専という学校があるのを教えてくれた。
その術師から呪霊やら術式やらを学び、垂水は地元の中学を卒業後、京都の呪術高専へと入学した。
高専には変なヤツしかいなかった。その中でも群を抜いていたのは東堂 葵だ。
好きなタイプを聞かれて答えたら、「つまらない」と泣き出して殴りかかってきた。意味が分からない。殴り返したら教師に怒られ、入学早々 謹慎を食らった。
自分をスカウトしてくれた術師は、垂水が高専に入学して半年後に死んだ。
死と隣り合わせのヤバいところに来たことを後悔したが、親戚の家に戻るよりは、変な連中と一緒に“バケモノ”と戦っていた方がマシだった。
流されてここまで来た――理由なんてどうでも良かった。
気がつけば周りにはどんどん変な奴らが増えていた。
本音と建前がごちゃごちゃになって、自分の笑った顔が本物か偽物かも分からなくなっていた。
――楽しいことなんて何もない。
東堂と女の趣味について語らった挙句に殴り合いの喧嘩をするのも、加茂に叱責されるのも、桃が呆れてため息を吐くのも。
真依の皮肉を聞き流すのも、メカ丸の正論に腹が立つのも、三輪がドン引きするのも、新田を悪ふざけに巻き込むのも、歌姫の怒鳴り声も……。
――そんな風にバカ騒ぎするのが、楽しいわけない。
術師は死と隣り合わせ。
この日常が長くないことなんて、充分 理解している。
だから――……楽しいなんて思わない。
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