第5章 心を揺さぶるエレジー【パンダだって/葦を啣む】
「学長殿」
「後は儂に任せて下がってよい」
楽巌寺の指示に術師の気配が消えた。
一瞬の静寂――夜蛾は霞む視界にぼんやりと楽巌寺の姿を捉える。
「……与のことを、助けてやってくれますか……」
何の話だ、と口を開きかける楽巌寺に何も言わせず、夜蛾は続ける。
「肉体の情報から、魂の情報を複製するんです」
その情報を【呪骸】の核に入力する。だが、それだけでは駄目だ。相性の良い三つの魂を宿した核を一つの【呪骸】に入れ、互いの魂を常に観測させる。
そうすることで初めて魂が安定し、自我が芽生え、生後三ヶ月を過ぎたあたりで呪力の自己補完を始める。
――それが、【完全自立型人工呪骸】の製造方法だ。
「なぜ……今さら話した⁉ なぜ もっと早く……なぜ生き延びなんだ……っ⁉」
息を呑んだ楽巌寺の震える声が遠くで聞こえた。これほど取り乱し、声を荒げる楽巌寺の姿など、そうそう見ることもない。
「【呪い】……ですよ、楽巌寺学長。私から、あなたへの……【呪い】です……」
若者の未来を守るため……そして、楽巌寺への【呪い】となるために……。
そこで夜蛾の意識は完全に途絶え、力を失い、その身体は地面へ倒れた。
* * *