第5章 心を揺さぶるエレジー【パンダだって/葦を啣む】
深い闇の中で街頭が光り、蛾を誘う。その明かりの上に、一人の男が立っていた。
「【呪骸】も連れずにどこへ行くのですか? 夜蛾学長殿」
「息子に会いに」
上層部の命令で自分を処刑に来た術師を前に、夜蛾は上着を脱ぎ捨てる。
【呪骸】を連れていない今、自分の武器は鍛え上げた肉体と拳だけだ。若い術師を前に、そう簡単に遅れはとらない。
夜蛾の答えの意味が分からず一瞬 眉を寄せたものの、術師は続けた。
「死罪となった貴方が唯一 助かる方法を教えましょう。【完全自立型人工呪骸】――その製造方法を今、ここで明かせ」
……やはり、どれだけ否定しても勘づいていたか。これまでは五条も、それとなく庇ってくれていたことには気づいていた。
「悟がいなくなった途端に強気だな」
「強気にもなりますよ。こちらには、歴戦の術師がついている」
術師の視線の先には、エレキギターを背負った見知った人物がこちらを見据えている。
「楽巌寺、学長……!」
エレキギターを激しくかき鳴らした。自身をアンプにして呪力を増幅し、打ち出す術式。単純だが、間合いに入ることができない。
刺客として術師が割って入る間もない。
拳を武器に戦うも、術式を使わず呪力で強化した肉体だけでは、自分よりも遙かに長く前線で活躍した術師に敵うはずもなく――……愛用のエレキギターをへし折ることで、一矢を報いるのがやっとだった。
両肩から斜めにクロス状に斬りつけられ、夜蛾は消えゆく意識をギリギリで繋ぎ止めつつも起き上がることはできない。