第5章 心を揺さぶるエレジー【パンダだって/葦を啣む】
罪人を閉じ込める結界に閉じられたパンダのもとを訪れた日下部は、ザンッとその腕を拘束していた縄を斬り捨てた。
「……いいのか、日下部」
「俺が助けたって言うんじゃねぇぞ」
いいな、と日下部はパンダに念を押す。知れたら最後、自分まで上層部に目をつけられ、追われる立場になってしまう。そんな面倒なゴタゴタに巻き込まれるのなんざゴメンだ。
パンダが捕まっているのは夜蛾を誘い出すため。表立って動くなんて度胸はないが、自分はいくらでも手を貸す。
「……あの人には恩があんだよ。オラッ、行け! 見つかっちまうだろ」
……瞼を閉じても思い出せる。あの日のことを。
愛する息子を失って廃人なった妹が、夜蛾の造った【呪骸】――タケルを前に正気を取り戻す姿を。
きっと この恩は、一生を懸けたって返すことなどできない。
はぁ…とため息を吐き、日下部は揺れるパンダの背中を見送りながら、口に咥えた棒付きキャンディを取り出して眺めた。
三輪も与と合流できただろうか。
途中で分かれた、少しそそっかしい妹弟子を思いつつ、日下部は再び棒付きキャンディに口をつけた。
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