第8章 彼女の計画、彼の差別化。
あんなに一生懸命スマホをリロードして、内緒で手に入れた「お揃いの白」。
それを速攻で見抜かれただけでなく、結局彼の手のひらで転がされて、挙句の果てに「俺の私物」に上書きされてしまった。
一連の流れが恥ずかしくて、うさみの心はもうキャパオーバーだった。
「……っ、い、いい……いい! 行かない!」
膝に置いていた本で顔を隠すようにして、うさみは精一杯の拒絶を口にする。
耳まで真っ赤になっているのは、彼に背を向けていても自分自身でよく分かった。素直に隣になんて行ったら、また何を言われるか、どんな顔で見られるか分かったもんじゃない。
けれど、そんな必死の抵抗も、彼にとっては極上のスパイスでしかない。
「……『いい』って何が? 俺のところに来るのが? それとも、俺の匂いでおかしくなりそうなのが?」
「違う…!」
背後から、ソファが軋む音。
彼が立ち上がり、ゆっくりとこちらへ歩いてくる気配が伝わる。
うさみはビクッとしてさらに体を丸めたけれど、逃げ場なんてどこにもなかった。
「……素直じゃないな」
頭上から降ってきたのは、呆れたような、けれど蕩けるほど甘い低音。
次の瞬間、大きな掌がうさみの肩を掴み、くるりと無理やり自分の方へと向かせた。
「……っ、……だめ、見ないで」
「見ないでって言われても無理。お前が俺の服着て、そんなに真っ赤になってんだから」
彼はうさみの前に膝をつき、目線を合わせる。
スウェットの袖で顔を隠そうとするうさみの手首を優しく、けれど確実に掴んで引き剥がした。
「……お揃い買ったこと怒ってないよ。……むしろ、愛おしくて死にそう」
彼はそう言うと、うさみの膝の間に自分の身体を割り込ませるようにして、至近距離で顔を近づけた。
彼が着ているのは、うさみが買ったばかりの新品。でも、それを着ているのが「彼」だというだけで、その服さえも既に彼の空気を纏い始めている。
「恥ずかしがる必要、どこにあんの? うさみは俺の彼女で、これは俺の服。……何も間違ってない」