第8章 彼女の計画、彼の差別化。
「お前さ、…何言ってるかわかってる?」
さっきまでの鋭い視線はどこへやら、いつもの、けれどうさみだけに向けられる特別なマイルドな光が瞳に戻ってくる。
「……わかった。脱がさないよ」
彼はそう優しく囁くと、ゆっくりと、けれど力強く腕の中に閉じ込めた。
178センチの大きな体が、白いスウェット越しにうさみをすっぽりと包み込む。
「……本当に可愛いこと言うな」
拓人はうさみの項に顔を埋め、深く、深く息を吸い込んだ。
まだ新品の匂いがする生地。でも、その奥からは微かに、うさみ自身の甘い香りが立ち上がっている。
彼はうさみを抱きしめたまま、ゆっくりとソファに腰を下ろした。
うさみを自分の膝の上に引き上げ、まるで子供をあやすように、背中を大きな掌で優しくなぞる。
「……そんなに、俺とお揃いが良かった?」
「拓人がいない時も、これ着てたら頑張れる気がする」
うさみが正直な気持ちを口にすると、拓人は嬉しさを隠しきれないように、うさみの額にそっと唇を落とした。
「そっか。……俺も、お前がこれ着てるの、嫌いじゃない。っていうか、めちゃくちゃ似合ってる」
彼はうさみの隠れた指先を探り当て、スウェットの袖越しにその手を握りしめた。
指と指を絡ませ、生地の感触を一緒に確かめる。
「……なんか、お前が俺の一部になったみたいだわ。……同じ色で、同じ形で」
彼は満足げに目を細めると、うさみの肩に顎を乗せて、テレビの画面をぼんやりと眺め始めた。
流れているのは、彼が映る舞台の映像。
でも今の彼にとっては、画面の中の自分よりも、腕の中で同じ「白」に包まれているうさみの方が、ずっと現実味があって、愛おしい。
「……今日はこのまま、こうしてよう。……気が済むまで、ずっと」
拓人はうさみの髪を優しく撫で、耳元で心地よい低音を響かせる。
新品だった白いスウェットは、二人の体温で少しずつ柔らかく、温かくなっていく。
部屋の中に流れる穏やかな時間。
お揃いの服が繋ぐ二人の心は、外の世界の喧騒なんて忘れてしまうほど、ただひたすらに甘く、深く溶け合っていた。