第7章 確信犯のメガネ。
意地を張り合っていたさっきまでの鋭さは消え、そこにあるのは、ただ一人の男の心身を案じる、深く落ち着いた愛情だった。
「……、……っ」
彼は言葉を失い、うさみの手のひらに顔を埋めるようにして目を閉じた。
18年もこの世界にいて、誰もが自分の「商品価値」や「スターとしての姿」を求めてくる中で、これほどまでに「自分自身」の安らぎを優先されたことがあっただろうか。
「……ほんと、可愛くない」
吐き捨てた言葉とは裏腹に、彼はうさみの手のひらに深く唇を寄せた。
全部を捧げたい自分と、それを許さない彼女。
主導権を握ったつもりが、結局は彼女の深い思慮の中に包み込まれてしまう。
「……分かったよ。……じゃあ、寝るまで。……寝るまでの時間だけでいいから、……今日はもう、誰のことも考えさせんな」
彼はそう言うと、うさみの首筋に深く顔を寄せ、今度こそ逃がさないように、でも壊さないように、静かにその体温を抱きしめた。