• テキストサイズ

彼はアイドル。

第7章 確信犯のメガネ。




ーもう寝るねー

そう送ったきり、うさみはスマホを伏せ、一度も画面を点けなかった。
直後に震えた気がしたけれど、手に取ることはしない。






翌朝、仕事に向かう準備をしながらチラリと確認すると、通知センターには彼からのメッセージが数件並んでいた。

『あ、そう。おやすみ』

(深夜1時)
『……まだ寝てないだろ。明日の生放送、見ろよ』

(朝6時)
『現場入った。昨日のやつ、あとでサブスクでもいいから見ろよな』

謝罪の言葉こそないものの、明らかに「うさみの関心」を惹きつけようと必死なのが伝わってくる。いつもの彼なら、一度「おやすみ」と言われた相手に追いメッセージなんて送らない。プライドが許さないはずだからだ。

(……相当、焦ってるな)

うさみは少しだけ意地悪な優越感を感じながら、あえて返信をせずに家を出た。

その日の昼休み。職場でふとテレビをつけると、情報番組に彼が生出演していた。
昨夜あんなに不機嫌で、深夜までスマホを握りしめていたはずの男が、カメラの前では「プロ」として完璧な笑顔を振り撒いている。

でも、うさみにはわかった。
ふとした瞬間に彼が見せる、どこか遠くを睨むような鋭い視線。それは、自分の思い通りにならない「何か」に苛立っている時の、彼特有の癖だ。



夕方になっても、うさみは沈黙を貫いた。

仕事が終わり、スーパーで買い物をして、お風呂に入って……。あえて「彼がいない日常」を丁寧に過ごしてみる。




/ 82ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp