第1章 彼氏は自担です。
「わわっ!? なに!? 誘拐!?」
「あー、うるさい。……ソファ戻るぞ。名前呼ぶまで、今夜は寝かせねーから」
「待って! 降ろして! 腰が悲鳴を上げてる! あと単純に恥ずかしい!」
「俺の腰は鍛えてっから大丈夫。」
178cmの視点から見る床は、思ったよりも遠い。
拓人はバタつくうさみを気にする様子もなく、安定感抜群の足取りでソファへ向かう。
舞台で培われた体幹の強さを、まさかこんな形で実感することになるとは。
ソファに辿り着くと、彼はうさみをそっと……けれど、絶対に逃げられないように自分の膝の上に下ろした。
いわゆる「正面向きの抱っこ」の形。
うさみの背中を、拓人の長い腕がすっぽりと包み込む。
「……よし。捕まえた」
拓人はうさみの首筋に顔を埋め、ふふっと満足そうに喉を鳴らした。
耳元で聞こえる彼の鼓動と、自分の心臓の音が、もうどっちがどっちかわからないくらい重なっている。
「……逃げんなよ。……俺、けっこうマジで寂しがってんだけど。気づいてる?」
いたずらっぽかった声が、急に少しだけ低く、熱を持った「男」のトーンに落ちる。
大きな手がうさみの背中をゆっくりと上下し、彼女の緊張を解きほぐすように優しく触れた。
「……いい加減、テレビの中のあいつじゃなくて、目の前の俺を見て。……名前、呼んでよ」