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彼はアイドル。

第5章 I want your flavor.






「……なんか喉、乾いた。私、飲み物買ってくるね」

首都高の小さなパーキングエリア。大型トラックが数台、エンジン音を響かせながら眠っている隅っこに、拓人はSUVを滑り込ませた。

「一人で大丈夫? 」

「大丈夫。ブラックコーヒーでいい?」

「ん。……気をつけて」

車外に出ると、冬の冷たい空気が頬を刺す。うさみは足早に自販機へ向かった。
自分の分の水と、彼のためのブラックコーヒー。寒さから小銭を入れる指先が少しだけ震える。

二つのボトルを抱え、逃げるように車に戻る。
ドアを開け、助手席に滑り込んだ瞬間、拓人が素早くロックをかけた。

「……おかえり。早かったね」

「はい、コーヒー」

受け取った拓人の指先が、うさみの冷えた手に触れる。
温かいコーヒーと、冷たい指先。その温度差に、車内の空気が一気に濃密になった。

「……怖かった?」

拓人が暗闇の中で、静かに、でも熱を帯びた声で尋ねる。

「大丈夫。拓人を待たせてると思うと、そっちの方がドキドした」

うさみがふふっと笑うと、拓人の瞳が鋭く細められた。
彼はシートベルトを外し、うさみの座席の方へと体を大きく乗り出してくる。

「……こんなスリル、本当は味合わせたくないんだけど」

拓人の大きな手がうさみの頬を包み込む。
すぐ外には、休憩中のドライバーたちがいるかもしれない。誰かがふと、この車のスモークガラス越しに目を向けるかもしれない。

「……でも、今は我慢できないわ」

言葉が終わるか終わらないかのうちに、拓人の唇が重なった。
密閉された車内、外の喧騒を遮断した「二人だけの聖域」。
見つかるかもしれないというスリルが、重なり合う唇の熱をいっそう激しくさせる。
拓人の舌先がうさみの唇を割り、深く、執拗に求めてくる。

「ん……っ、……」

うさみの手からこぼれ落ちそうになった水のボトルを、拓人は空いている方の手で器用に受け止め、ダッシュボードに置いた。
その間も、キスは一度も途切れない。

アイドルが見せる、一瞬の独占欲と、理性と本能のせめぎ合い。
うさみは彼の首筋に手を回し、深夜のパーキングエリアで、溶けるような甘い攻防に身を任せた。




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