第3章 至近距離で拝む自担の顔。
ハンバーグを完食させ、幸せな余韻に包まれた後のキッチン。
「今日は俺がやるから」と宣言した拓人が、袖をまくり上げてシンクに向かっている。
「デクラッセはできなかったけど、皿洗いなら完璧。……見て、この手際の良さ」
「はいはい。じゃあ、私はコーヒー淹れるね」
うさみはクスクス笑いながら、彼の隣で豆を挽き始めた。
お湯を注ぐと、香ばしい香りがキッチンいっぱいに広がる。
カップをリビングのテーブルに置きに行き、再びキッチンへ戻ると、拓人はまだ真剣な顔で最後のフライパンと格闘していた。
少し丸まった広い背中、水仕事をする大きな手。
その背中を見ていると、胸の奥がぎゅーっとして、言葉にできない愛おしさが溢れ出した。
うさみは音を立てないようにそっと近づき、彼の腰に腕を回して、その広い背中にぴたっと顔を埋めた。
「……うわっ、びっくりした……」
拓人の体がびくんと跳ね、水の音が止まる。
「……うさみ?どうした、急に」
「……んーん。なんでもない。……ただ、こうしたかっただけ」
うさみは彼の背中の温もりを感じながら、さらにぎゅっと腕に力を込めた。