第3章 至近距離で拝む自担の顔。
「はい、拓人くん。タマネギのみじん切り、お願いね」
「任せろ。俺、あの企画から成長したから。……あ、でも『デグラッセ』は今日はしないからな?」
拓人が慣れない手つきで包丁を握りながら、ニヤリと笑う。
うさみはそれを見て、思わず吹き出した。
「ははは、難しい名前だったね。……でも、マヨネーズは入れないでね。ソースに『マヨカス』浮いちゃうから」
「……っ、それ言うなよ! あれはあれでコクが出ると思ったんだよ!」
拓人は抗議しながらも、一生懸命タマネギと格闘している。
178cmの彼が、うさみの家の少し低めのキッチンカウンターで背中を丸めて作業している姿は、なんだか大きな犬が料理を手伝っているみたいで、どうしようもなく愛おしい。
「……ねえ、拓人。あの時、最後の方パニックになってたでしょ」
「なってねーよ。……ただ、勝利のレシピがガチすぎて、俺らの想像の斜め上行ってただけ」
二人は、あの時の動画の裏話や、メンバーとのやり取りを笑いながら話し、ハンバーグを形にしていく。
ジュワー、という音と共に肉の焼けるいい香りがキッチンに広がり、いよいよ仕上げのソース作りへ。
「よし。今回はマヨネーズなし、正当な赤ワインソースね」
うさみがフライパンでソースを煮詰め、スプーンですくい上げて、ふーふーと息を吹きかける。
「……うん、完璧。味見してみる?」
うさみが、自分が使ったスプーンをそのまま拓人の口元へ運ぼうとした、その時。
「……違う。こっち」
拓人は差し出されたスプーンを軽く手で避けると、うさみの腰をぐいっと自分の方へ引き寄せた。