第3章 至近距離で拝む自担の顔。
彼の頭の重みが、心地よい疲労感となってうさみ腿に伝わる。
長年、仕事のプレッシャーや責任感を一人で抱え込んできたうさみにとって、拓人が与えてくれるこの「重み」は、他にはない安らぎだった。
「……んー……」
拓人が、まるで猫のようにうさみの腿に顔を擦り付ける。
その仕草に、うさみの目蓋が自然と重くなっていく。
さっきまでの彼の「意地悪な顔」も、「アイドルの顔」も、今はもう遠い。
目の前にあるのは、自分に全てを預けてくれる、愛おしい「彼」だけだ。
「……拓と……」
うさみの声が、少しだけ掠れる。
眠気が、彼女の意識の輪郭を曖昧にしていく。
その指先の動きも、だんだんとゆっくりになり、彼の髪の上で止まった。
「……うさみ?」
拓人が、うさみの様子がおかしいことに気づいて、ゆっくりと顔を上げた。
そこには、自分を膝枕しながら、うとうとと船を漕いでいる彼女の姿があった。
口元は緩み、目は閉じられ、まるで子供のように無防備な顔。
「……まさか、寝てる?」
拓人は、まさか自分が甘えている間に、膝枕をしてくれる彼女の方が眠ってしまうとは夢にも思っていなかった。
そして、その顔を見た瞬間、彼の中に、これまで感じたことのない種類の「愛おしさ」が込み上げてきた。
拓人は、そっと自分の頭をうさみの膝から外し、彼女の横に移動した。
そして、そのまま佳奈の体を自分の腕の中に抱き寄せ、彼女の頭をそっと自分の肩に預けさせた。
「……うさみ」
肩に寄りかかった彼女の頭を、優しく撫でる。
彼女の疲れを全て吸い取ってやるように、彼は抱きしめる腕に、これ以上ないほどの愛情を込めた。
「……俺のこと、よしよししてるつもりが、自分が充電切れちゃったんだな。……可愛い」
拓人はそう言って、うさみの額にそっとキスをした。
今度は、彼が彼女を包み込む番。
穏やかな陽の光が差し込むリビングで、二人は重なり合うように、静かな眠りに落ちていった。