第3章 至近距離で拝む自担の顔。
「…………」
規則正しい呼吸音。うさみは、自分の膝の上で完全に眠りについた(と思っていた)拓人の顔を、10センチの至近距離で凝視していた。
(本当に、彫刻みたい…)
彼女は、誰にも邪魔されない「神席」での観察に夢中だった。
キャリアの中で培われた「良いものを見抜く目」が、彼の造形美を一つひとつパーツごとに解剖していく。
(……この唇。喋る時は皮肉屋な形になるのに、閉じてるとこんなに優しそう……)
うさみは、そっと指を伸ばした。
触れるか触れないか、まつ毛の影が頬に落ちるその境界線に、そっと指先を近づける。
まさに「自担への最大級の敬意」を込めた、聖域への接近。
その時だった。
「……満足した?」
「…………っ!!?」
低く、けれどあまりにも明瞭な声が、静かな部屋に響いた。
閉じていたはずの拓人の瞳が、パッと見開かれる。
そこには眠気の欠片もなく、むしろ獲物を罠にハメた後のような、楽しげな光が宿っていた。
「……ぇ、……ぇ、起きて……っ」
「最初っから起きてるよ。……うさみがあんまりにも必死な顔して見てくるから、どこまで近づいてくるか試してたんだけど」
拓人はニヤリと笑うと、固まっているうさみの手首を素早く掴んで、そのまま自分の頬に引き寄せた。