第2章 お手振り王子の誕生日。
いつのまにかソファで少しうとうとしていたうさみは、ガチャリと鍵が開く音と軽快な足音で目を覚ました。
「ただいま。起きてる?」
入ってきたのは、疲労感どころか、大きな仕事を終えた高揚感で瞳をキラキラと輝かせた拓人だった。
シャワーを浴びてメイクも綺麗に落とし、私服に着替えてから事務所の車で送ってもらったのだろう。深夜とは思えないほど、すっきりとしていて、でもどこか興奮が冷めやらない様子だ。
「お疲れ様。 あけましておめでとう!」
うさみが立ち上がると、拓人はそのままの勢いで抱きしめ、くるりと一回転させた。
「あー、最高だった! マジで楽しかった! うさみ見つけた時、本気でテンション上がったからね。……聞こえたよ、『てらー!』って呼んでくれてるの。あの瞬間の俺、絶対世界で一番かっこよかった自信あるわ」
「本当にかっこよかったよ。……お手振りのところ、私の周りの人たち、みんな腰抜かしてたんだから」
「だろうな。うさみがいたから、いつもより余計に気合入った。……あー、やっぱりステージ最高だわ」
拓人はうさみを降ろすと、ソファの横に置いてあったプレゼントの箱を手に取り、嬉しそうに微笑んだ。
「で、約束通り戻ってきたよ。……これ、さっそく着ていい? 31歳最初の夜、うさみとお揃い(ペアマグ)でゆっくりしたい」
「もちろん。……お風呂、沸かしてあるよ?」
「最高。……じゃあ、ソッコーで着替えてくる。……今日寝かせないからね。ライブの感想、全部聞かせてもらうから」
拓人はそう言って、プレゼントのルームウェアを抱えて楽しそうにバスルームへ向かった。
プロとして最高の仕事を終えた後の彼の笑顔は、どんな照明よりも眩しく、うさみの心を温かく満たしていった。
1月1日。新しい年の、特別な夜明け。
二人だけの「本当の誕生日パーティー」は、これからが本番だった。